修繕積立金の値上げは妥当か
値上げが必要かどうかの判断と、総会で何分の何の賛成が要るのかを、公的資料にもとづいて整理します。

値上げが妥当かどうかは、現在の徴収額ではなく計画期間全体の平均額で判断します。 現在額をガイドラインの目安と直接比べると、段階増額積立方式のマンションでは ほぼ必ず「不足」と出てしまいます。
決議は原則として普通決議(出席組合員の議決権の過半数)です。 ただし管理規約に金額そのものが書かれている場合は規約変更に当たり、特別決議(出席組合員及びその議決権の各4分の3以上)になります。
実務でいちばん揉めるのがこの分岐です。まずお手元の管理規約を開いて、 金額が書かれているかどうかだけ確認してください。
手順は4つです
- 1
いくら足りないかを出す
長期修繕計画から Z=(計画期間当初の残高 + 期間中の徴収総額 + 専用使用料等からの繰入総額)÷ 総専有床面積 ÷ 計画期間(月)を算出し、 ガイドラインの区分別の目安と比べます。均等積立方式なら 「現在の月額 ÷ 専有床面積」が Z の良い近似になります。
- 2
いくら上げるかを決める
目安には幅があります。まず幅の下限に届く額を最低ラインとし、 長期修繕計画の工事項目と単価が現在の物価水準に見合っているかを確認してから、 幅の中のどこを狙うかを決めます。段階増額積立方式なら0.6×D ≦ E かつ 1.1×D ≧ F (初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内)も点検します。
- 3
決議要件を判定する
管理規約に金額そのものが書かれているかを確認します。ここが普通決議と特別決議の分かれ目です。
- 4
総会に諮る
必要賛成数を実数で示します。「4分の3以上」ではなく 「120戸なら区分所有者90名以上かつ議決権3/4以上」のように、 自分のマンションの数字に直して書くほうが伝わります。
普通決議か、特別決議か
お手元の管理規約に、修繕積立金の金額そのものが書かれていますか?
書かれていない(別表や細則で定めている/総会決議で決めている)
普通決議
出席組合員の議決権の過半数
規約変更に当たらないため、第47条第2項の普通決議(出席組合員の議決権の過半数)で決められます。標準管理規約に沿った規約であれば通常はこちらです。
書かれている
特別決議(4分の3以上)
出席組合員及びその議決権の各4分の3以上
金額の変更が規約変更に当たるため、第47条第3項の特別決議(出席組合員及びその議決権の各4分の3以上)になります。
標準管理規約 第25条は管理費等の「額」を規約に書かず、 共用部分の共有持分に応じて算出するとだけ定めています。 この建て付けに沿った規約であれば、値上げは規約変更に当たりません。
お手元の規約が標準管理規約と同じとは限りません
ここで示しているのは国土交通省の「標準」管理規約であって、 個々のマンションの管理規約ではありません。分譲時の原始規約に金額が 書き込まれている例もあります。必ずお手元の管理規約の本文と別表を確認し、 判断に迷う場合は弁護士・マンション管理士等の専門家にご相談ください。
決議要件の一覧
出典: 令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型) 第47条(総会の会議及び議事)
| 区分 | 可決要件 | 議案の例 |
|---|---|---|
| 普通決議第47条第2項 | 出席組合員の議決権の過半数 |
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| 3分の2以上の決議第47条第4項 | 出席組合員及びその議決権の各3分の2以上 |
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| 特別決議(4分の3以上)第47条第3項 | 出席組合員及びその議決権の各4分の3以上 |
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| 建替え・建物更新・取壊し決議第47条第5項 | 組合員総数及び議決権総数の各5分の4以上(区分所有法第62条第2項各号の事由に該当する場合は各4分の3以上) |
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2026年3月31日以前に招集手続きをした総会は旧法です
令和7年改正の標準管理規約は、2026年4月1日に全面施行された改正区分所有法を反映しており、 特別決議が「出席組合員及びその議決権の各4分の3以上」と出席者を分母とする 形になっています。旧法の「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」(総数が分母)とは 必要賛成数が変わります。
経過措置により、招集手続きが 2026-03-31 以前に行われた総会には 旧法が適用されます。招集通知の発送日を確認してください。
先延ばしが高くつく理由
計画期間のうち必要な総額が決まっているとき、値上げを先延ばしすると残りの期間で同じ額を集めることになります。単純計算でも 「計画期間 ÷ 残り期間」倍です。
| 改定の時期 | 残り期間 | 必要な単価の倍率 |
|---|---|---|
| 今すぐ | 30年 | 1.00倍 |
| 5年後 | 25年 | 1.20倍 |
| 10年後 | 20年 | 1.50倍 |
| 15年後 | 15年 | 2.00倍 |
30年の計画期間で、必要総額が変わらないと仮定した場合の単純計算です。 実際にはこれに加えて、先延ばしの間に積み立てられなかった不足分と、 建設工事費の上昇分が乗ります。
さらに、区分所有者の高齢化が進むほど値上げの合意形成は難しくなります。 ガイドラインも段階増額積立方式について「築年数の経過に応じて必要な修繕積立金が 増加することや区分所有者の高齢化等により費用負担が困難化していくことを踏まえ、 早期に引上げを完了させることが望ましい」と述べています。
よくある質問
- 修繕積立金の値上げは普通決議ですか、特別決議ですか?
- 原則は普通決議です。マンション標準管理規約 第25条は管理費等の「額」を規約に書かない建て付けで、額は共用部分の共有持分に応じて算出するとだけ定めています。したがって値上げは規約変更に当たらず、第47条第2項の普通決議(出席組合員の議決権の過半数)で決められます。ただし管理規約の本体や別表に金額そのものが記載されている場合は、値上げが規約変更に該当し、第47条第3項の特別決議(出席組合員及びその議決権の各4分の3以上)になります。
- 修繕積立金の値上げが妥当かどうかは何で判断しますか?
- 現在の徴収額ではなく、長期修繕計画から算出する計画期間全体の㎡単価 Z=(計画期間当初の残高+期間中の徴収総額+専用使用料等からの繰入総額)÷総専有床面積÷計画期間(月)を、国土交通省ガイドラインの区分別の目安と比べます。現在の徴収額を目安と直接比べると、段階増額積立方式のマンションではほぼ必ず「不足」と出てしまいます。
- いくら値上げすればよいですか?
- ガイドラインの目安には幅があり、下限まで上げるのか平均まで上げるのかで金額が変わります。まず幅の下限に届く額を最低ラインとし、長期修繕計画の工事項目と単価が現在の物価水準に見合っているかを確認したうえで幅の中のどこを狙うかを決めます。段階増額積立方式の場合は、初期額を基準額の0.6倍以上、最終額を1.1倍以内に収める考え方がガイドライン p.14 に示されています。
- 値上げを先延ばしすると、どれくらい負担が増えますか?
- 計画期間のうち残りの期間で必要額を集めることになるため、単純計算でも「計画期間÷残り期間」倍になります。30年計画で5年先延ばしすれば30÷25で1.2倍、10年なら30÷20で1.5倍です。これに加えて、その間に積み立てられなかった不足分と、建設工事費の上昇分が乗ります。
- 2026年4月の区分所有法改正で決議要件は変わりましたか?
- 令和7年改正のマンション標準管理規約では、特別決議が「出席組合員及びその議決権の各4分の3以上」と出席者を分母とする形になっています。また瑕疵の除去やバリアフリー化のための変更について、3分の2以上の決議区分が設けられています。ただし招集手続きが2026年3月31日以前に行われた総会には経過措置により旧法が適用されるため、招集通知の発送日を確認してください。
まず不足額を出す
ガイドラインの目安との比較と、段階増額積立方式の0.6/1.1チェックができます。 入力はブラウザ内で処理され、サーバーへ送信されません。
出典: 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改定 / 令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型) 第47条(総会の会議及び議事)